コラム
「 ドビュッシーの3つの『ビリティスの唄』について」
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3つの『ビリティスの唄』について by Ayuo
『ビリティスの唄』の聴いた時、自分が表現したいと思っている世界がそこにあった。
ドビュッシーはこの曲集を100年以上前に作曲していた。音楽には言葉だけでは伝えがたいほどのメランコリーと孤独さに満ちている。
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『鳩』 より
ずっと永いこと、わたしは美しかった
もう女ではなくなる日が来たのだ
そして 知ることになるだろう
胸張りさける想い出のかずかず
燃えさかる孤独な欲望と 手に落ちる涙とを
もし 人生が長い一つの夢だというなら
それに逆らってどうなろう
こ腰の疲れ果てる時
体が崩れ落ちたところに眠り込む
朝が来て まぶたを開き
わたしは髪におおわれて身震いする
一羽の鳩が窓の所に所に止まっている
今は何の月かと わたしはたずねる
彼女は答える《今は女が愛する月》
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これは晩年のビリティスの唄。
ビリティスは紀元前六世紀の初めころ、ギリシャのある一山村で生まれました。生まれた地方はタウラスの巨大な山々が聳え立ち、深い森に蔽われ、もの悲しい幽遠な地であります。そこで、彼女は母や姉達と静かな生活を送っていました。樹々におおわれたタウラスの山肌には、牧童たちが羊の群れを追っているのが見えました。
ビリティスはよく森に遊びに出かけていました。
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ドビュッシーの構成では『ビリティスの3つの歌』は、ある愛の始まり、その成就、
そしてその愛の終わりを表している。
その終わりは胸がさけるほど悲しく、ビリティスは、それによって、自分の生まれ故郷を去って、二度と戻らない。
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『笛』より
ヒヤサンティのお祭りの日
彼は牧神の笛を私にくれた。
彼はひざまずいている私に、吹き方を教えてくれる
でも、私は少しふるえてしまう
彼は私が吹いたあとに笛を吹く
やっと聞こえるほどに、そっと吹く
私たちは何も言わなくてもよいほどの身近な間柄
それでも 私たちの歌は 答え合おうとして
かわるがわる 二つの唇は笛の上で一つになる
遠くなって夜が更けるにつれ 雨蛙の歌が始まる
母さんは 私が失くした帯を探すのに
こんなに長いことかかったなんてきっと思わないわ
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『豊かな髪』 より
あの人はわたしに云った
「ゆうべ僕は夢を見た
首のまわりに君の髪の毛がついていた
胸の上にも 首すじにも まるで首飾りのように
君の髪がまつわりついていたんだ」
「僕はそれを撫でていた すると それは僕のものになった
こうやって 僕たちは口と口をかさね
同じ髪で 永遠に結ばれたんだ
しばしば二本の月佳樹が 一本の根しかもたないように」
「少しずつ 僕には思えて来た
僕らの手足が こんなにも一つになっているので
僕は君になり 君は夢のように僕の中に入ってくる」
あの人は云い終わるやいなや 静かにわたしの肩に手をかけた
そして 大そう優しい目差しでわたしを見つめたので
わたしは身をふるわせ 目を伏せてしまった
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しばらくして、行ってみると、誰もいない。
みんな死んでしまった。
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『水の精の墓碑』 より
霧でおおわれた森にそって わたしはあるいていた
サンダルは 泥にまみれた雪がはまり込んで重かった
彼は私に云った「何を探しているの?」
「サティロスの足跡をつけているのよ」
その割れ目のある足型は
白いマントのボタン穴のように 互いちがいに続いている
彼は云った 「サティロスは死んだよ」
「サティロスもニンフも死んだんだ
三十年来このかた こんなに厳しい冬はなかった
お前の見ているその足あとは 牡山羊のものなんだ
でも ここに居るとしよう 彼等の墓碑のあるこの場所に」
こうして彼は 鉄の鍬で泉の氷を割った
そこは かつて水の精たちが 笑いさざめいていた所だ
彼は冷たい大きな氷のかたまりを取り出して
蒼い空に向けてかかげ 透かし眺めていた
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この唄の物語はたいしたドラマがないようにも見えるかもしれない。ドラマは内面に行っている。ビリティスは笛の吹き方を教わっているが、一つ一つの動きは愛の動きに変わっていく。そして、抱き合って愛し合うようになるが、口と口を重ねている時にも、本当は死ぬ状態を感じている。しかし、その死は全てが終わる死ではなく、永遠を求めている。そして、永遠とはなんだろう?永遠は一瞬の中でも感じられる。この3つの曲はつながっている。
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この3曲以外にも、ドビュッシーは『語りと室内楽のビリティスの唄』を作曲している。そこでは、旅に出て、キプロス島で暮らすビリティスの晩年も描かれています。